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文部科学省防災業務計画 第4編 原子力災害対策
この編においては,原子力災害対策特別措置法(平成11年12月17日,法律第156号,以下「原災法」という。)及び原子力災害対策マニュアル(平成12年8月29日原子力災害危機管理関係省庁会議,以下「関係省庁マニュアル」という。)等で規定されている文部科学省の所掌事務について原子力防災対策に関する必要な事項等について定める。
第1章 災害予防
第1節 連絡体制の整備
夜間,休日の場合等においても対応できるよう,情報の収集体制,連絡体制,非常参集体制の一層の整備,充実を図る。
また,特定事象(原災法第10条第1項前段の規定に基づく通報を行うべき事象をいう。以下同じ。)及び原子力緊急事態(原災法第15条に規定された原子力緊急事態をいう。以下同じ。)発生時における,文部科学省と関係機関及び原災法第12条に規定された緊急事態応急対策拠点施設(以下「対策拠点施設」という。)との間の連絡のための専用回線の整備・維持など通信手段の確保を図る。
また,事故後の経過に応じて周辺住民に提供すべき情報について整理しておくとともに,住民からの問い合わせに対応する住民相談窓口の設置等についてあらかじめ準備しておく。
第2節 災害応急体制の整備
第1 原子力事故対策チーム
・ 文部科学省が安全規制を担当する原子力施設(以下「担当施設」という。)において事故が発生した場合には,必要に応じ,原子力事故対策チームを組織する。また,事故の内容により,全省的な対応が必要と判断される場合は,必要に応じ,原子力事故対策本部を設置する。原子力事故対策チーム及び原子力事故対策本部の組織並びに必要な事項については,別に定める。
・ 担当施設に係る核燃料物質等の事業所外運搬(以下「運搬」という。)中の事故に際して関係省庁間の密接な連絡調整が必要と判断される場合又は関係省庁の求めがあった場合は,速やかに放射性物質輸送事故対策会議を開催する。
第2 原子力防災専門官
・ 担当施設の所在する地域ごとに原子力防災専門官を駐在させるとともに,その業務内容について具体的に定めたマニュアルを作成する。また,その能力の維持向上のため原子力防災等に関する研修を行う。
第3 専門家等の動員体制の整備
・ 原子炉・放射線防護等に関する専門家,緊急モニタリング要員及び緊急被ばく医療派遣チーム並びに必要な資機材について,その組織及び動員体制の整備,維持に必要な措置を講じる。
また,輸送支援の要請を含む現地への移送手段等について,原子力施設ごとにあらかじめ関係機関と調整の上定めておく。
第4 対策拠点施設の指定,整備
・ 担当施設に係る対策拠点施設をあらかじめ指定し,非常用電話,ファクシミリ,テレビ会議システムその他非常用通信機器,応急対策の実施に必要な資料等を整備,維持する。
また,対策拠点施設を地域における原子力防災の拠点として平常時から訓練等に活用する。
第3節 資機材の整備
緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(以下「SPEEDIネットワークシステム」という。)及び放射線測定器等の整備並びに緊急時に必要な連絡設備等の適切な整備に努める。また,地方公共団体その他関係機関に対し,資機材の整備に関する所要の指導を行う。
第4節 教育,訓練
必要に応じて,応急活動のためのマニュアルを作成し,職員に周知するとともに,緊急時に対処するための訓練を定期的に行い,緊急時における職員の対応能力の向上を図る。
また,国,地方公共団体,原子力事業者等が共同して行う総合的な防災訓練に関する計画を策定し,防災訓練を実施する。
計画には,当該年度における防災訓練の対象となる原子力事業所,実施する時期,共同して訓練を行う主体,特定事象発生の通報,原子力緊急事態の想定,原子力緊急事態宣言及び原子力災害合同対策協議会の運用に関すること等を定める。
さらに,地方公共団体,原子力事業者等が行う防災活動の各要素ごと,地域ごとの訓練について支援する。
訓練後には専門家の評価も活用し,課題等を明らかにし,必要に応じ,防災訓練計画や関係省庁マニュアルも含め,関連するマニュアルの改善等を行う。
第5節 原子力防災に関する知識の普及啓発
平常時より住民に対し,放射線防護等に関する正しい知識の普及啓発に努める。
第6節 防災に関する研究等の推進
原子力防災に関する科学技術及び研究の振興を図るとともに,原子力防災に資するデータの集積,研究成果の収集,各種試験研究施設・設備の整備充実を図る。また,国,地方公共団体等の防災機関への情報提供等を推進するとともに,必要に応じ,防災施策への反映を行う。
第7節 再発防止対策
担当施設又は運搬中において原子力事故,または原子力災害が発生した場合,その原因の究明を行い,必要な再発防止対策を講じる。また,原子力事業者が原災法に基づいて行う原子力災害対策のための措置について,適時適切に報告を求め,必要に応じて立入検査を行う。
第8節 学校等における原子力防災上必要な措置等
学校等においては,原子力災害に関しても,第2編 第1章 第1節から第3節までに準じて,防災計画の整備,防災教育等の充実,防災意識の普及,学校等の防災訓練の実施が図られるよう,関係機関に対し,指導及び助言を行う。
第9節 三次被ばく医療体制の構築
独立行政法人放射線医学総合研究所(以下「放医研」という。)及び国立大学法人広島大学と連携し,三次被ばく医療体制の構築に努める。
第2章 災害応急対策
第1節 情報の収集・連絡及び通信手段の確保
第1 特定事象発生情報の連絡等
・ 担当施設又は運搬中において,原子力事業者から特定事象発生の通報があった場合には,当該特定事象について,原子力緊急事態宣言を発出すべきか否かの判断を直ちに行い,特定事象の概要,特定事象の今後の進展の見通し等事故情報等についての連絡を関係機関に対して行う。また,関係機関との相互の連絡を密にするとともに,関係省庁事故対策連絡会議,現地事故対策連絡会議との連携を密にする。さらに,原子力防災専門官等に対し,現地における情報の収集,原子力事業者,地方公共団体,現地事故対策連絡会議等との間において連絡調整等を行うよう指示するなど現地との緊密な連携の確保に努める。
・ 原子力防災専門官は,特定事象発生後,原子力保安検査官と連携を図りつつ直ちに現場の状況等を確認し,その結果を文部科学省本省及び関係地方公共団体に連絡する。
第2 原子力緊急事態宣言発出後の連絡等
・ 対策拠点施設において,状況の把握等の機能別に分けたグループに職員を配置し,緊急事態応急対策活動の状況,被害の状況等に関する情報を随時連絡することにより,関係機関との間において,常時継続的に必要な情報を共有する。
第3 放射能影響の早期把握のための活動
・ 原子力施設に係る特定事象発生の通報を受けた場合,直ちにSPEEDIネットワークシステムを緊急時モードとして,放射能影響予測等を実施し,経済産業省(経済産業省が安全規制を担当する原子力施設(以下「担当外施設」という。)において,特定事象発生の通報があった場合に限る。),関係都道府県等の端末に転送するとともに,予測結果を関係省庁に伝達する。
また,現地へ緊急時モニタリング要員及び機材を動員し,地方公共団体が行う緊急時モニタリング活動を支援する。
さらに,原子力事業者から連絡された施設からの放射性物質等の放出状況及び地方公共団体がとりまとめたモニタリングの結果等をとりまとめ,関係機関に連絡する。
第2節 活動体制の確立
第1 文部科学省原子力災害警戒本部
・ 文部科学大臣は,担当施設又は運搬中において特定事象発生の通報を受けた場合には,直ちに文部科学省原子力災害警戒本部を組織する。文部科学省原子力災害警戒本部の組織及び必要な事項については,別に定める。
第2 関係省庁事故対策連絡会議及び現地事故対策連絡会議の開催
・ 担当施設又は運搬中において特定事象発生の通報がなされた場合,当該特定事象に関する情報の確認,共有化,応急対策の準備の調整等を行うため,関係省庁事故対策連絡会議を開催する。
また,現地に派遣された指定行政機関等の職員相互の連絡調整を行うため,必要に応じ,職員を派遣し,指定行政機関等の職員を対策拠点施設に集合させ,現地事故対策連絡会議を開催する。
その場合,必要に応じ,地方公共団体,指定公共機関及び原子力事業者に対して現地事故対策連絡会議への職員の派遣を求める。
なお,担当外施設に係る関係省庁事故対策連絡会議,現地事故対策連絡会議及び原子力艦に係る関係省庁原子力艦事故対策連絡会議が開催された場合は,速やかに職員を派遣し情報の収集及び提供に努める。
第3 専門家の派遣
・ 担当施設又は運搬中において特定事象発生の通報を受けた場合,発生した特定事象の状況等を把握し,応急対策の迅速かつ的確な準備,事故原因の究明等に資するため,又は,関係地方公共団体の要請に基づき,専門家及び専門的知識を有する国の職員を現地に派遣する。
第4 文部科学省原子力災害対策本部
・ 文部科学大臣は,担当施設又は運搬中の事故が原子力緊急事態と判断した場合には,直ちに文部科学省原子力災害対策本部を組織する。文部科学省原子力災害対策本部の組織及び必要な事項については,別に定める。
第5 文部科学省原子力災害対策支援本部
・ 担当外施設に関して特定事象発生の連絡があった場合,また,原子力艦の原子力災害の発生のおそれがある場合又は原子力艦の原子力災害が発生した場合,文部科学省原子力災害対策支援本部を組織する。文部科学省原子力災害対策支援本部の組織及び必要な事項については,別に定める。
第6 原子力災害対策本部等
(1)原子力緊急事態宣言及び原子力災害対策本部
・ 担当施設又は運搬中において原子力緊急事態が発生していると認める場合,その旨を官邸(内閣官房)及び内閣府に連絡し,原子力緊急事態宣言案及び地方公共団体の長に対する指示案を官邸(内閣官房)及び内閣府に送付した後,内閣総理大臣に必要な情報を報告するとともに,原子力緊急事態宣言案及び地方公共団体に対する指示案を提出する。内閣総理大臣による宣言の発出に当たっては,内閣総理大臣の緊急事態応急対策に関する事項の指示を地方公共団体に伝達する。原子力災害対策本部(本部長:内閣総理大臣)が設置された場合,文部科学大臣が原子力災害対策副本部長,科学技術・学術政策局長が事務局長を務めるなどにより原子力災害対策本部を運営する。
(2)現地対策本部
・ 原子力災害対策本部の事務の一部を行う組織として現地対策本部が設置された場合,副大臣は現地対策本部長,科学技術・学術政策局次長は事務局長としてその任に当たる。
(3)原子力災害合同対策協議会
・ 現地対策本部は,対策拠点施設において,所在の都道府県及び市町村の現地災害対策本部等とともに,原子力災害合同対策協議会を組織する。副大臣は原子力災害合同対策協議会を主導的に運営する。
(4)その他
・ 担当外施設において,原子力緊急事態宣言が発せられた場合には,速やかに原子力災害対策本部及び現地対策本部に職員を派遣する。また,原子力艦の原子力災害において非常災害対策本部等及び現地対策本部が設置された場合には,速やかに職員を派遣する。
第3節 輸送支援の要請
担当施設又は運搬中において特定事象発生の通報を受けた場合,専門家,緊急時モニタリング要員,現地対策本部等の要員及び医療関係者等の派遣に際して,必要に応じ,防衛省等に対し輸送支援を要請する。
第4節 屋内退避,避難収容等の防護活動
屋内退避,安定ヨウ素剤の服用等の防護活動に係る地方公共団体への指導,助言又は指示に関し必要な情報を提供するとともに,放射性物質による汚染状況の調査,必要に応じ,汚染物の除去等の対策について関係機関に要請する。
第5節 緊急被ばく医療
必要に応じ,放医研及び国立大学附属病院の医療関係者等からなる緊急被ばく医療派遣チームを現地に派遣する。同チームは都道府県の災害対策本部のもとで,被ばく患者(被ばくしたおそれのある者を含む。)に対する診断及び処置について,現地医療関係者等を指導するとともに,自らもこれに協力して医療活動を行う。
また,放医研及び被ばく医療に対応可能な国立大学附属病院は,現地医療機関で遂行困難な放射能除染,障害治療,追跡調査等について,国立病院と互いに緊密な連携をとって行うこととされている。
第6節 関係者等への的確な情報伝達活動
文部科学省は,担当施設又は運搬時における緊急時の場合には,地方公共団体と連絡をとりつつ,随時報道機関への発表を行う。
また,周辺住民のニーズを十分に把握し,原子力災害の状況,文部科学省が講じている施策に関する情報等周辺住民に役立つ正確かつきめ細かな情報を適切に提供する。
なお,その際,民心の安定並びに高齢者,障害者,外国人,乳幼児その他の災害時要援護者及び一時滞在者等に配慮した伝達を行う。
さらに,必要に応じ,速やかに住民等からの問い合わせに対応する電話を備えた窓口の設置,人員の配置等を行うための体制を整備する。
第7節 学校等における安全対策等
学校等においては,原子力災害に関しても,第2編第2章第1節から第4節まで及び第8節に準じて,情報の収集,伝達,学校等の安全対策,被災者の救護活動への連携,協力に万全を期するよう,関係機関に対し,指導及び助言を行う。
第3章 災害復旧,復興
第1節 健康相談体制の整備
災害が発生した担当施設の周辺地域の居住者等に対する心身の健康に関する相談に応じるための体制の整備について,都道府県に協力する。
第2節 風評被害等の影響の軽減措置
原子力災害による風評被害等の未然の防止又は影響を軽減するために,農林水産業,地場産業の商品等の適正な流通の促進のための広報活動を行う。
第3節 教育研究活動の再開
学校等においては,原子力災害に関しても,第2編第3章第3節に準じて,教育研究活動の早期再開,児童生徒等及び教職員の健康管理に万全を期するよう,関係機関に対し,指導及び助言を行う。
第4章 地域防災計画の作成の基準
地域防災計画は,地域的特性を十分配慮して作成されるよう,作成マニュアルの作成等により,担当施設に係る関係地方公共団体を指導するものとする。また,担当施設外に係る関係地方公共団体においても,放射線障害防止の観点から必要な指導を行う。